犬が体をしきりに掻いている様子を見て「何かおかしいな」と感じたことはありませんか?かゆみが長引いたり、皮膚に赤みが出たりする場合、ただの一時的なものではないかもしれません。
特に、慢性的な皮膚炎を引き起こすアトピー性皮膚炎は、犬にとって大きなストレスとなり、適切な治療とケアが欠かせない病気です。
今回は犬のアトピー性皮膚炎について、症状や原因、治療方法、予防法などを詳しく解説します。
症状
犬のアトピー性皮膚炎は、初期の段階では飼い主様が見逃してしまいがちですが、以下のような症状を注意深く観察することで早期発見が可能です。
<かゆみ>
アトピー性皮膚炎の初期症状として特に目立つのが「かゆみ」です。まだ皮膚に赤みや湿疹が見られない段階でも、犬がしきりに体を掻く、舐めるといった行動が現れます。このかゆみは、目や耳、口の周り、脇、お腹、足先といった特定の部位に出ることが多いです。
<皮膚の赤みや脱毛>
症状が進行すると、掻き続けたことによる皮膚の赤みや湿疹が見られるようになります。また、舐めたり掻いたりすることで毛が抜け、足先や肛門周りなどに脱毛が起こる場合もあります。これらの部位に傷ができると、細菌感染を引き起こしやすくなるため注意が必要です。
<外耳炎の併発>
アトピー性皮膚炎では、皮膚の症状に先行して外耳炎が見られる場合もあります。幼い頃から外耳炎を繰り返す場合は、アトピー性皮膚炎の可能性が高いため、早めに動物病院で診てもらいましょう。
原因
アトピー性皮膚炎を引き起こす原因には、以下が挙げられます。
<環境アレルゲン>
ハウスダストや花粉、カビ、ダニといった環境アレルゲンが主な要因とされています。特に春や夏など、季節の変わり目に症状が悪化する場合は、これらのアレルゲンが関係していることが多いです。例えば、散歩中に草むらを歩いた後にかゆみが強まる場合、植物や花粉の影響が考えられます。
<環境要因>
湿度や気温などの生活環境も症状に影響を与える要因です。梅雨や夏場のように湿気が多い時期には、カビや細菌が繁殖しやすくなり、皮膚の状態が悪化しやすいです。また、冬場の乾燥も皮膚を刺激することがあるため、一年を通して適切な管理が必要です。
<遺伝的要因>
アトピー性皮膚炎は、遺伝的な素因が関係していることも知られています。両親がアトピー性皮膚炎を持っている場合、その子犬が発症する可能性が高まります。
国内では、フレンチ・ブルドッグや柴犬、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどの特定の犬種で発症率が高いことが報告されています。
診断方法
アトピー性皮膚炎の診断は他の皮膚疾患との区別が必要なため、さまざまな方法で慎重に行われます。
<問診>
飼い主様から犬の症状や生活環境について詳しく聞き取ることで、診断の手がかりを得ます。特に以下の情報を伝えると、スムーズな診断が可能になります。
・症状が現れた時期や季節的な変化
・症状が出やすい部位
・食事内容や生活環境の変化
<皮膚検査>
皮膚表面や内部を調べる検査です。例えば、セロテープを使って皮膚表面の細菌や真菌を確認する方法や、スプーン状の器具で皮膚を擦り、寄生虫の有無を調べる方法などがあります。
<除去食試験>
食物アレルギーとの関連を調べるために、特定の療法食を一定期間与える方法です。これにより、アトピー性皮膚炎と他のアレルギー性皮膚疾患を区別することができます。
<アレルギー検査>
血液検査でアレルゲンに対する抗体を測定することもあります。ただし、必須ではなく必要に応じて行われます。
治療方法とケア
アトピー性皮膚炎の治療には、薬物療法やご家庭でのケアが組み合わせて行われます。
<薬物療法>
ステロイド薬や免疫抑制剤は、アレルギー反応を抑える効果があります。ただし、副作用のリスクがあるため、獣医師の指導のもとで使用する必要があります。また、分子標的薬という新しいタイプの薬も登場しており、副作用が少なく高い効果が期待できます。
<食事療法>
皮膚の健康をサポートするために、特別なフードを与えることが有効です。特に食物アレルギーを併発している場合は、療法食への切り替えが必要になります。
<スキンケア>
日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿をしっかり行うことが重要です。低刺激のシャンプーや保湿剤を使用し、シャンプー後は皮膚が乾燥しないよう早めに保湿するようにしましょう。
予防法
アトピー性皮膚炎を完全に防ぐことは難しいですが、以下のような対策で症状の悪化を防ぐことができます。
<快適な住環境の整備>
適切な温度と湿度を保つために、加湿器や除湿器を使用しましょう。また、掃除をこまめに行い、ハウスダストやダニの繁殖を防ぐことが大切です。
<アレルゲンの回避>
散歩コースを変更したり、帰宅後に体を拭いたりすることで環境アレルゲンとの接触を減らします。
<ストレスケア>
十分な運動や遊びの時間を確保し、犬がストレスを感じないようにすることも予防の一環です。
まとめ
犬のアトピー性皮膚炎は、適切な治療とケアで上手に症状をコントロールすることが可能です。飼い主様の観察力と早期対応が、犬の生活の質を大きく左右します。かゆみが気になったら早めに動物病院へ相談し、専門的なアドバイスを受けましょう。愛犬が快適に暮らせるよう、日常のケアを大切にしてください。